今回のvol.6と次回vol.7は水回りの説明をしていきます。まずは水回り設備の中でもメインとなるキッチンの現状や種類などの説明と、PS(パイプスペース)の考え方になります。次回は風呂やトイレの構造とレイアウト変更をする場合のポイントについて説明をしていきます。

中古物件を購入したり、実家から戸建を引き継いだりした場合、水回り設備や間取りが今の暮らしにフィットしていないことも多くあります。リノベーションで水回りの問題も解決して、暮らしやすくしていきましょう。

キッチンについて

●台所からキッチンへ
昔は主に「台所」と呼ばれていて、料理をするだけの場所という考えでした。台所の位置も日が当たりにくい北側の壁際などが多かったようです(冷蔵庫が普及していない時代に食品の保存に適していた為)。
今では「キッチン」と呼ぶようになり、料理をする場所だけではなく、家族が一緒にいる場所という考えになってきました。そのため築浅の物件などは部屋の間取り図を見ても、「DK=ダイニングキッチン」や「LDK=リビングダイニングキッチン」のように部屋とキッチンが一緒になっている間取りがほとんどです。

●キッチンのタイプ

(オーダーキッチンとオープンキッチンの例)

キッチンのタイプは大きく「システムキッチン」と「オーダーキッチン」に分けられます。システムキッチンは複数のユニットを並べて配置し、シンク付きのワークトップ(天板)で連結して一体化したものです。調理用機器などもビルトインできることで見た目もすっきりし、広いワークトップで作業がしやすいメリットがあります。
オーダーキッチンは文字どおり、自由に作っていくタイプです。レイアウトや装飾などを好みに仕上げることができますが、コストが高くなりやすいことも覚えておきましょう。

●オープンキッチンとセミオープンキッチン
家族と一緒にいる場所としてのキッチンも大きく2種類の型があります。ひとつは「オープンキッチン」、もう一つは「セミオープンキッチン」です。
オープンキッチンは壁に仕切られておらず、リビングやダイニングと繋がっていてとても開放感があります。家族とのコミュニケーションも取りやすいうえ、部屋の窓からの景色を眺めながら料理ができたりと良い面が多いです。ただ、気をつけるポイントとして、レンジフード(換気扇)の性能によって、料理の臭いが部屋にこもってしまう可能性があります。またリビングやダイニングと一緒になっているので、キッチンも含めたインテリアとして見せることを考えると、調理器具や食材の収納をしっかり考えておく必要があります。
セミオープンキッチンはキッチンの前面にカウンターや壁があり、料理中に散らかりやすい調理器具や調味料など隠すことができます。吊戸棚などがあるカウンターキッチンなどは収納も難しくありません。ある程度独立した空間があるので、コミュニケーションも取りつつ、料理に集中できるのがメリットです。

キッチンのレイアウトも、間取りに合わせていろいろあります。代表的なものは「アイランド型」(キッチンの一部または全部が島のように独立している。)「ペニンシュラ型」(キッチンの一部が半島のように壁についている。)「Ⅰ型」「L型」などがあります。

アイランド型:開放的、大勢での使用に向いているが目立つ位置にあるため片付けやすい工夫が必要。
ペニンシュラ型:作業台の面積が大きく、動線も短く作業しやすいがスペースも必要になる。
I型:シンプルで場所を取らない。最も一般的。
L型:キッチンの動線が短く、使いやすいがコーナー部分の収納は使いづらい。

キッチンを一新する場合は、使う人の希望はもちろんのこと、部屋の一部としての見え方、そして家族とのコミュニケーションのあり方も考えながら選択していくと良いのではないでしょうか。

●自作もできる!?
キッチンは各種メーカーからたくさんの種類が販売されていて選択肢も豊富です。キッチンを自分で作るのは大変そうなイメージもありますが、配管を専門業者に依頼する部分以外はそこまでハードルは高くありません。そして、使う人の背の高さに合わせてキッチンの高さも合わせることができるのは大きな魅力です。例えば使いやすい高さの木枠を作って、お気に入りのシンクをはめるだけでも十分です。または店舗用の厨房機器を中古で購入して並べるだけでもOKです。既製品では物足りない、またはもっとこだわりたい、コストを抑えたいという方はチャレンジしてみるのもいいかもしれません。

(自作キッチンの例 / 木枠を作って、シンクやコンロをはめ込んでいる)

(自作キッチンの例 / 中古の厨房機器を並べるだけでインダストリーな雰囲気に)

PS(パイプスペース)の考え方

キッチンをはじめ、風呂やトイレなどの水回りのレイアウト変更を考えるときに基本になってくるのがPS(パイプスペース)です。水回り設備を移動するときは必ずPSのことから考え始ることになりますので、まずはPSのことをしっかり理解しましょう。

●PS(パイプスペース)とは?どこにあるの?
PSと言われても建築関係の知識がない方は「?」になると思います。PSは上下階に給排水を通す配管やガス管を収納しているスペースのことです。
浴槽やキッチン器具、トイレといった水回り設備を配置するためには必ず配管が必要になります。その際もPSの位置から配管していくため、物件の間取り図面などでPSの位置はしっかり押さえておきましょう。

(パイプスペースの位置例)

中古物件のマンション・団地のPSは主に既存の水廻り設備が集まっている近くで、共用廊下側の壁面(専有部分内)にあることが多いです。また、上下階の住居の間取りに影響されて、リビングなどの変な場所にPSが配置されているケースもあります。図面でしっかり確認し、わからない場合は管理会社に確認をしましょう。

●給排水の違い
PSには給排水それぞれの配管が通っています。給水(上水道)と排水(下水道)の2種になり、給水(上水道)は公共の配水管から分岐して、給水管を通り、物件に引き込まれています。排水(下水道)は、各住居から出た排水や汚水が排水管を通り、公共の下水道管へ接続されています。

●配管の見分け方
給水管と排水管は簡単に見分けることができます。それぞれパイプの太さが違い、給水管は直径15〜20mm程度のパイプ、排水管は50〜100mmのパイプが多く使われています。すぐに見分けがつきますので覚えておきましょう。

(配管の例 / 太いパイプが排水、細いパイプは給水管やガス管)

水回り設備のレイアウト変更

●排水管の移動には注意しましょう
実際の給排水管の工事では、PSからの距離で配管(主に排水管)の勾配の角度や、使用するパイプのサイズを判断していきます。給水やガス、電気は配管できても、排水管の勾配が確保できない場所へは移動できない、というケースもあります。専門的な知識や技術が必要になってくるため、専門業者に依頼するようにしましょう。

●床の高さが変わる!?
例えば、キッチンのレイアウト変更をする場合、移動する場所まで給排水や電気・ガスなどの配管を這わせる必要があります。壁際などではない場合、床に配管をしていくため、その分のスペースを確保しなくてはいけません。一般的には「床の高さを上げる」という対応方法になります。バリアフリーにする場合は床の高さを揃える必要がでてきますので、段差の解消方法などは専門家に相談するとよいでしょう。


いかがでしょうか?キッチン(台所)の考え方も時代とともに変化してきて、より自由に、使いやすくなってきています。現状に不満がある方は、改めて検討してみるのもよいのでは?PSは水回りを考えるときに重要なポイントです。しっかり覚えておきましょう。

次回vol7は「水回り その2」です!水回り設備の風呂やトイレの説明になります。お楽しみに!


イラスト / Yosuke Yamauchi
画像 / 1枚目:remi hamabe,その他:みんなでつくろう編集部
図説 / みんなでつくろう編集部