緑に埋もれた廃屋
灘区、六甲山の山際にあった古い建物。10年以上空家となっていた建物を改装した。建物には家具や本が大量にそのまま残されていた。屋上の防水や設備をやりかえて、2世帯で住めるように改装をおこなった。
1982年京都生まれ大阪育ち。一級建築士・宅地建物取引主任士。いくつかの設計事務所勤務を経て不動産仲介業を始めました。不動産仲介をベースに設計から施工まで、業種を超えて建築に関わる仕事を行ってます。
大学を卒業後、兵庫区にある廃屋となったボロボロの長屋を改装して暮らし始めたことで、DIYに目覚めました。現在住む家も廃屋となった家を改装、住みながらDIYをしています。自分の巣を自分でつくることは、動物的本能の働きなので、本能の赴くままに物件をみつけては行動してます。最近は団地の1室のDIYが終えて、仲間たちと廃ビル1棟まるごとDIYをするような活動を始めました。
神戸市灘区の山際にあった戸建。建物外形がわからないほど緑もじゃもじゃになって、10年ほど誰も住んでおらず、廃墟のようになってました。この物件のオーナーから、最初はお仕事として改装の設計を依頼されました。
現地に入り、緑をかきわけて、パリパリと剥がれ落ちる腐った鉄骨階段は登るのが怖かったです。
物件種別 | 2世帯住宅 ( 1階賃貸中・2階居住中 ) |
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物件概要 | 補強コンクリートブロック造 2階建 |
かかった日数 | 4年前から今まで、そしてこれからも継続して住みながら改装していく。 |
お金のこと | オーナーから改装設計の依頼を受けて、1室を賃貸で借りることになった。その後購入して今も住み続けている。 |
設計を依頼される上で、賃貸物件として貸し出して、すぐに収益化するということが必須条件でした。
水回りを新たに追加して、1階と2階を分けて貸せるように改装しました。
もともとアトリエとして使われていたため、個性ある内装はそのままに、DIY可の物件として改装は最小限にとどめて初期投資を抑え、短期間で投資回収できる計画としました。
当初はオーナーから設計の仕事だけで依頼を受けたのですが、現場で大工さんといろいろ一緒に改装を手伝っているうちに、愛着が沸いていつしか僕はここに住みたくなってしまいました。
僕は大工さんに今度からここに住みますと言ったら、大工さんは渋い顔をして「こんな山奥で寒い建物に住むのは僕は嫌だ」と言っていたのが印象的でした。
予想はしていたが、交通の便が悪く、建物は断熱が弱く室内が寒いのは大変でした。ただ、そのまましんどいなと飽きらめず、オーナーからはDIY自由と言われていたので、いろいろ試行錯誤して改装しました。
床も寒かったので、無垢のフローリングを貼りました。これで底冷えする寒さはだいぶ抑えることができました。塗装は蜜蝋ワックスを塗り塗りした。けして汚れに強い塗装ではないが、足裏の質感がよく吸湿性も失われないので気に入っています。
壁の色も飽きたら、塗替えました。収納を撤去して壁を造り、流行りの黒板塗料でグレーを塗装したりしました。近所の友達と一緒にすると数時間でイメージが一新したことに達成感がありました。
屋上に上がる階段をつくったり、その時その時の気分で床や壁を塗装したりしていきました。
いろいろと問題点はあったが、DIYで建物のアップデートを繰り返すことで、住まいは心地よくなりました。
六甲山の山際なので、静かで落ち着いた環境と、遠く市街地と緑が眺められる風景はとても気に入っています。休日は庭でBBQや日曜大工をしたり、ピアノを設置したり猫を飼ったりと、賃貸でもいろいろ自由にさせてもらえたことがありがたかったです。
神戸でも有数のイノシシ出現エリアであり、夏場は近所を猪が道路を占拠していた。
親子で群れをなして猪渋滞がおきる事もしばしば。神戸の山際は自然が豊かだ。妻が最初は猪を怖がっていたが、しばらくすると猪がいることが日常の風景になりました。
最初は廃屋だった家。荒廃して近所のおじさんも困っていたけど、今はメンテナンスしてくれる人が住んでいるから安心だとおっしゃってもらってます。
賃貸で住み始めたが、自治会の役員にもなり地域に愛着が沸いて、この場所が気に入っています。
建物に問題点があれば、その度に改装を施していきました。そんな改装も一段落ついたころに、オーナーから建物を買わないかという話を持ちかけられました。こちらからすると願ったり叶ったりで、僕もいい話だと喜んで購入を決めました。
問題点に対してなんとなくの感性で、場当たり的に改装していった感じだけれど、結果的に現在は住みやすい家になりました。
こんなことになる結果をイメージはしていなかったけれど、自分の住まいは自分でアップデートしていった結果であると思います。
今の家の改装はまだまだ続くだろうし、引っ越しして新たな物件の改装に取り組むのもありかなと、妄想はやみません。
◆参照サイト◆
神戸R不動産(http://realkobeestate.jp/)